赤ちゃんや子どもの食事において、
「窒息するのでは」と不安に感じたことのあるパパママも多いのではないでしょうか。

今回は、どうして食べ物が詰まるのか?
どういう食べ物に注意したらいいのか?
窒息した時の対処法はどうしたらいいのか?
についてお伝えします。

注意すべき食べ物や環境を知り、対処法を学んでおくことによって、
日々の食事をストレスないものにしていきましょう。

(1)誤嚥とは

食道から胃腸等への消化器官へ流れるべき食物や水分等が、
誤って気管や肺へ流れこんだ状態のことをいいます。

食物以外のものを誤って口から摂取することをいう「誤飲」とは異なります。

(2)窒息とは

窒息とは、空気の通り道に物や液体が詰まり、
息がしづらくなる、もしくは全くできなくなる状態をいいます。

経口摂取中や嘔吐後等に、口や喉に手をあてて苦しそうなうなり声を発する、
あるいは食事中に顔色が青ざめる等は窒息のサインです。
窒息は生死に直結しますので、素早い対応が必要です。

乳幼児が食べ物を詰まらせやすい原因として、
気管の直径が成人よりも約1cm小さい点が挙げられます。
そのため、小さな異物でも詰まりやすくなります

また咳反射といって、気道内の刺激に対して、肺内の吸気を突発的に流出させ、
異物を排除する防御的反射が弱いため、
詰まったものを外に排出しにくいのも特徴です。

さらに犬歯や臼歯が生えそろっていないため、噛む力も弱いです。
生えそろったとしても、充分に咀嚼する能力が完成するまで時間がかかるため、
幼児期は不安定とされます。

円筒状で直径39mm、奥行き51mmの

「誤飲チェッカー」

くらいのサイズはすべて口に入ってしまうと言われています。
母子手帳にもサイズが載っていると思いますので、一度確認してみましょう。

身近なものだと、ペットボトルのキャップや500円玉くらいを目安にしてみてください。

どんな食べ物でも誤嚥、窒息の可能性はありますが、
特に丸くて硬いものや、
弾力があって噛みにくいものなどには充分に注意しましょう。

食材は月齢や成長に応じて食べさせ方を工夫する必要があります。
内閣府は教育・保育施設などにおける事故防止ガイドラインを作成していますが、
家庭でも参考になるため、ぜひ一度確認してみてください。

食品の形態、特性食材の例食べ方・注意
丸いものミニトマト、ぶどう、さくらんぼ4歳までは4等分する
※2等分はNG
球形のチーズつぶす
うずらの卵小さく切る
飴、ラムネ与えない
もちもちするもの餅、白玉団子与えない
硬すぎるもの生の果物(りんご、柿、梨など)加熱する
いか、えび、貝類嚙み切れないので2歳未満には与えない
特にいかは小さく切って加熱するとさらに硬くなるため注意
※幼児期でもすりつぶすなど加工が必要です
気管に入りやすいものピーナッツ、煎り大豆、枝豆など5歳以下には与えない
※細かく砕いても危険性がありますが、
ペースト状や粉末であれば食べられます
喉に張り付きやすいもの海苔きざみ海苔など、小さく切る
パン水分を取って喉を潤す
詰め込まず、よく噛む
唾液を吸収して飲み込みづらいもの鶏ひき肉のそぼろ豚肉との合挽を使用する
片栗粉でとろみをつける
煮魚味を染み込ませ、やわらかくしっかり煮込む
ゆでたまご細かくして何かと混ぜる
弾力性があるものこんにゃく糸こんにゃくを1cmに切る
ソーセージ縦半分に切る
えのき、しめじ、まいたけ1cmに切る
エリンギ繊維に逆らい、1cmに切る
水菜1cmから1.5cmに切る
わかめ細かく切る

参照:教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン

こちらを見ていただいて、どう感じたでしょうか。
「注意するものがこんなにあるの?」
「離乳食期だけでなく、就学前まで気をつけなきゃいけないの?」
と思った方も多いのではないでしょうか。

正直私も「めんどくさいな」と思いました。
食材の例を見るとげんなりしてしまうと思うので、
どういった形状の食材に注意が必要なのかを覚えておきましょう。

例えば「気管に入りやすいもの」の中には「枝豆」があります。
では「枝豆」を食べさせてはいけないのか?
と言うとそうではありません。

「枝豆」は茹でたとしても、つるっとしていて硬いですよね。
これを例え細かく刻んだとしても、
硬さは変わらないので、
咀嚼がうまくできない幼児期には気管に入りやすくなってしまいます。

ですが、ペースト状であれば、安心して与えることができる食材となります。
私はCOOPの枝豆ペーストを愛用していて、
豆腐に混ぜたり、ミルクや牛乳を混ぜたりしてスープにしていますよ。

このようにこの食材は何が何でもダメ!
ということではなく、形状を考えて成長に合わせた食事の提供ができるといいですね。

食材の工夫だけでなく、
食事中の環境を工夫することでも
事故に繋がりにくくすることができます。

(1)水分を摂って喉を潤してから食べさせること

食事の際には喉のすべりを良くするために、水分で喉を潤すことも大切です
余裕があれば、食事と一緒に汁物を用意してもいいですね。

(2)姿勢を整えること

腰が据わったら、ベビーチェアを使うのが望ましいとされています。
足の裏が床についている方が、姿勢が安定するため、
あごや舌に力が入り、咀嚼がしやすくなります。

(3)ながら食べをしないこと

歩きながら食べる、
テレビを見ながら食べる、
遊びながら食べるなど
ながら食べをしないようにしましょう。

気が散るような状態だと、
食事に集中することができません。
集中できない状態だと咀嚼も充分にできませんので、注意しましょう。

(4)食事中に驚かせないこと

食事中に後ろから声をかけたり
大きな音をたてたりすると、
驚いて食べ物を詰まらせてしまう可能性がありますので注意しましょう。

(5)ゆっくり落ち着いて食べること

泣いたり嫌がったり眠たくなったりしているときには、
食事を与えない、もしくは一時中断することも必要です。

(6)大人が見守ること

食事は大人も一緒に取った方が良いですが、
タイミングがずれてしまうこともありますし、
子どもの性格によっては難しい場合もあるかもしれません。

一緒に食事ができなくても、
食事の様子は隣で見守りましょう。

上手におとなしく食べていてくれる場合は、
「今のうちに洗濯を!」
「今のうちに片づけを!」
と私も思ってしまいます。

特にワンオペの場合は大変だと思うのですが、
「今どんなものが食べられるのかな?」
「食べ方の特徴はどんなかな?」
「どういう風に食べて(噛んで)いるかな?」
など、お子様の様子を確認していると、成長に合った食材の提供もしやすいですよ。

食事に集中できる環境を整え、 子どもを見守ることで窒息を防ぎましょう。

では実際に食べ物が詰まってしまった時はどうしたら良いのでしょうか。
窒息状態になると、たった数分で呼吸が止まり、心停止してしまう可能性があります。

まずは直ちに119番通報を行ってください。
同時に、詰まった食べ物を除去するための応急処置を行う必要があります。

対処法としては

背部叩打法
胸部突き上げ法
ハイムリッヒ法(1歳未満はNG)

の3種類があります。

(1)背部叩打法

1歳未満の乳児の場合、
片腕にうつ伏せに乗せて片手で顔を支えます。
少し大きな子の場合は、救護者が膝を曲げ(もしくは椅子に座り)、
太ももがうつ伏せにした子どものみぞおちを圧迫するようにします。

この体勢で、子どもの背中の肩甲骨の間のあたりを
手のひらで5~6回強く叩き、詰まった食品を吐き出させます。

(2)胸部突き上げ法

背部叩打法でも窒息が解除できない場合や意識がない場合には、
子どもを仰向けに寝かせ、
心肺蘇生と同じように、左右の乳頭を結んだ線の中央で少し足側を、指2本で押します。

(3)ハイムリッヒ法

1歳以上の子どもの場合、
子どもの背中側から救護者の両手を回し、
みぞおちの前で両手を組んで、勢い良く両手を絞ってぎゅっと押すことで、
詰まった食品を吐き出させることもできます。

但し、この方法は1歳未満には行ってはいけません。
また、妊婦や意識のない方にも行ってはいけません。
成人であっても強く施術すると内臓を損傷する場合がありますので、
ハイムリッヒ法を行った場合は、救急隊員に処置を行ったことを伝えましょう。

乳児では胸部突き上げ法と背部叩打法、
1 歳以上ではハイムリッヒ法と背部叩打法を組み合わせ、
それぞれ5〜6回を1サイクルとして繰り返します。
窒息を解除することができず、反応がなくなったら、
直ちに心肺蘇生を開始し、救急隊が到着するまで続けます。

ここまで読んでいただきましたが、
実際に窒息してしまったとき、
冷静に対処できるでしょうか。

私は難しいかなと思います。

もちろん知識として知っておくことは大切なことです。
ですが、例えば地震の対応は、机上で学ぶだけでなく、
避難訓練などを行うことによって災害に備えますよね。
窒息時の対応についても、実際にやってみることで冷静に対応できるのです。

実は私の息子も窒息しかけたことがありました。
それはパンを食べ始めた頃。

「本当はかじり取って食べてほしいのに、
好きすぎて口いっぱい頬張っちゃうの。
だからパンを食べさせる時は小さくちぎってあげてね。」
夫にそう伝えて満足した私は、
朝食時にボーっとしていました。

「顔が青ざめてる!!どうしたらいい?!」

という夫からの叫びでハッとして、
慌てて背部叩打法を行いました。
どうしよう出てこない、
119して!
と言っている間に吐き出したパンはかなりの大きさでした。

たまたま前日にパパママ向けの救命講習を受けていた私は
比較的冷静に対処できたものの、
夫はその場で固まっていました。
「なんとなく」知っていても、実際はパニックになってしまうものです。

救命講習は消防署で受講することができます。
地域によっては子育て支援センターなどでも
救命講習を受けることができます。
有名チェーン店や大型商業施設のイベントでも行っているのを見たことがあります。

パパママ向けの講習だと、
保育士さんが子どもを見ていてくれる場合がありますので、
集中して受講できるかと思います。

救命講習では窒息時の対応だけでなく、
子どもの成長に合わせた
胸骨圧迫の仕方や人工呼吸の方法についても
教えてもらうことができました。

いかがでしたでしょうか?

応急処置を実際に体験し、
注意すべき食べ物とより良い食事環境を知っていただくことで、
窒息の不安を減らして、楽しい食事時間を作っていきましょう。

ライター:AZUMI

第一子出産を機に離乳食アドバイザー、幼児食アドバイザーの資格を取得。
だしソムリエの資格を持っていたことから、離乳食とだしの関係に興味を持ち、
離乳食おだしインストラクターの資格を取得。

親が笑顔だったら子どももハッピー!をモットーに子育てをしています★
現在は仕事をしながら、子育て中の食事に関する悩みを持つ方々の相談会を実施しています。